希望

「ほんまに夢やったんやろか……」

家にはネジの服も額当ても髪の毛一本も落ちてなかった。先生もお蕎麦屋さんもネジのことを忘れていった。

お蕎麦屋さんの帰り道、私はため息吐きながら帰路へ向かった。夢にしては、本当に長かったなぁ。

「あの」

振り返ると、前に見かけたケーキの女の子。元気よく声をあげたかったけどそんな気分やなくて。私は軽く、こんにちはーと返した。

「これ」

その子は私の前まで来ると、小さな袋を手渡してきた。

「? 何? これ?」
「それじゃあ」

足早に去っていく女の子。なんやろ。私は気になってその場で袋を開けてみた。

「ラブレターやったりしーー」

そこには見慣れたハンカチがあった。隅っこに、ネジと刺繍してあるハンカチ。



「ほらぁ、夢じゃないやんかぁ……」

車椅子にへたぁ、ともたれかかる。蕎麦屋さんも夢やーとか先生も苦笑いとか、ちょっぴり酷いで。

「……そういえばネジ忍者やったな」

優しいネジのことやから生き返らせてくれたりしたんかな、なんかそんな感じのことできそうな雰囲気やしな。そんでそういう禁術使ったからドロン!ってしたんかなぁ。



「いや、や」

何がドロンやねん、そんなん。

「ネジと会えなくなるぐらいなら死んだ方がマシや……っ」










「っネジ!! ネジ……!!」

身体中がずしりと重く、溺れそうな程の血の匂いにクラクラとする。

「ネジ兄さん……!!」

ナルトと、ヒナタ様の震えた声が聞こえる。

ああそうか。オレは二人を守れたのか。


ーー脳裏に、眩しいくらいの少女の笑顔。


……いや三人、三人も守れた。

これで全部終わりなんだ。

でも、もし。

はやての世界が死後の世界ならーー。